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3年振りの新作『シレンシオ(静寂)』をリリースしたワールドスタンダード。
今回のアルバムは、アルゼンチン周辺の音楽家たちが奏でる豊かなサウンドと、
ワルスタ主宰者・鈴木惣一朗さんの出会いと、その感動から生まれたアルバムです。
このアルバムをして、彼らに対する”「拍手と愛」の手紙”と言い、
アルゼンチン周辺の音楽家たちにオマージュを捧げる鈴木惣一朗さんに、
あらためて今回のレコーディングで影響を受けた音楽、”シレンシオ(静寂)”な音楽について教えていただきました。


「孤高」の音楽
老若男女が楽しめる娯楽、どのジャンルにも属さない、無国籍の音楽を目指したワールドスタンダードは、
1985年の結成当時からある意味「孤高」の存在でした。
「孤高である」ということは、意訳すれば。
自由であるということ。永遠であるということ。
けれど、そのきびしさゆえ、寂しさゆえ。
同じ境遇の音楽家を、探す旅に出ます。
イギリスのペンギン・カフェ・オーケストラ。
マルチニークのカリ。
フランスのフランソワ・ドルーベ。
ハワイのマーティン・デニー。
アメリカのヴァン・ダイク・パークス、ジョン・フェイヒィ。
イタリアのニコラ・ピオヴァーニ。
万人向けではないけれど、好事家が、ひとりで聴く音楽。
と言っては、彼らに失礼か。
けれど、ワールドスタンダードにとって、
彼らが明らかにメイン・ストリームでした。
音楽が持つ喜び。哀しみ。その機微。
彼らが示す、その音楽に触れる度、刺激され、
ワールドスタンダードは、25年という歳月、何度も生まれ変わったのです。
そして近年。
辺境の地とも呼べる、光と水の国から、豊かな音楽が聴こえてきました。
エグベルト・ジスモンチ、エドゥアルド・マテオといったグルから派生した、
瑞々しい、アルゼンチン周辺の音楽家たち。
カルロス・アギーレ。
アカセカ・トリオ。
セバスチャン・マッチ。
セス・イリアス。
セルジオ・サントス。
アンドレ・メマーリ
プエンテ・セレステ。
ホルヘ・ファンデルモーレ。
ぼくは驚きます。
すべてのアルバムが素晴らしいことに驚きます。
『シレンシオ』は、その感動から生まれたアルバムです。
ブエノスアイレスの音楽家たちへの「拍手と愛」の手紙です。
『シレンシオ』を聴くことで、今まで紹介されることが少なかった「孤高」の音楽に
興味を持ち、耳を澄ませて頂けたら、これほど嬉しいことはないです。
よろしくお楽しみ。
鈴木惣一朗(ワールドスタンダード)2010年/秋

■ワールドスタンダードがタワー新宿店と選ぶ”シレンシオ(静寂)の音楽”。
“VENTANAS” ACA SECA TRIO
アルゼンチンのいくつかあるグループの中で、最も勢いがあると思います。しかし、勢いと言っても、静謐でイノセント。ふと、リターン・トゥ・フォーエヴァーのことを思い出したりもします。このアルバムには映像も収録されているのですが、3人の音の関係性が自然でいい。
“Canciones” Puente Celeste
アカセカ・トリオがリターン・トゥ・フォーエヴァーだとしたら、プエンテ・セレステは何だろう、マハビシュヌ・オーケストラかな。職人気質を感じるというか、その研ぎすまされたアレンジ力は、今後のアルゼンチン音楽を切り開くでしょう。
フルート、クラリネットを奏でるモギレフスキーのアプローチが豪快で好きです。
“PEQUENOS MUNDOS” JORGE FANDERMOLE
胡桃がぽつんと置かれた、ジャケット通りの音。木管楽器の流れが美しいです。ちょっと変わったシンガー・ソングライターでアルゼンチンではなく、時にシャンソンのようにも聴こえたり。カンツォーネのような、人懐っこいところもあり。
そんなに凄いことをやってるわけではないのに、何度も聴きたくなる不思議なひとです。
この3枚のアルバムは、タワー新宿店7Fに設置されているLabels UNITEDのコーナーで取り扱っています。
ワールドスタンダード『シレンシオ』とともに是非御試聴ください。

■ワールドスタンダードが選ぶ”シレンシオ(静寂)の音楽”。
“LUZ DE AGUA” Sebastián Macchi, Claudio Bolzani, Fernando Silva
キーパーソン/カルロス・アギーレのレーベルから、5年前ひっそりとリリースされた「水の輝き」のアルバム。入手するまでの半年間、ぼくは個人オーダーをし続けました。そして『シレンシオ』の制作途中、道に迷うと必ず聴いていました。ピアノ、ギター、ベース。あリふれた編成なのに、アンサンブルがとにかく素敵です。キラキラしています。そして、セバスチャン・マッチのため息のような歌声。深いなぁ。圧倒的な美しさです。
“VENTANAS” ACA SECA TRIO
アルゼンチンのいくつかあるグループの中で、最も勢いがあると思います。しかし、勢いと言っても、静謐でイノセント。ふと、リターン・トゥ・フォーエヴァーのことを思い出したりもします。このアルバムには映像も収録されているのですが、3人の音の関係性が自然でいい。また、メンバーそれぞれのアルバムも秀逸で、ギターと歌担当のファン・キンテーロ、ピアノのアンドレス・ベエウサエルトのソロ2枚は必ず聴いて欲しいです。
“Canciones” Puente Celeste
アカセカ・トリオがリターン・トゥ・フォーエヴァーだとしたら、プエンテ・セレステは何だろう、マハビシュヌ・オーケストラかな。職人気質を強く感じるというか、その研ぎすまされたアレンジ力は、今後のアルゼンチン音楽を切り開くことでしょう。フルート、クラリネットを奏でるモギレフスキーのアプローチが豪快で好きです。ワールドスタンダードの録音では、武嶋くんのクラリネット・ダビングの際「モギレフスキーならどう吹くのかな?」と考えたりもしました。
“BALANCE” SARA TAVARES
彼女は、西アフリカの元ポルトガル領、カーボベルデ共和国の出身。アフリカと少し離れた南北アメリカに囲まれた国、ポルトガル独自の風土性をファドとは違う形で聴かせてくれます。しかも、とても身近に、愛おしく。言い換えると、ノラ・ジョーンズが生まれ持ったインド音楽の背景をコーティングして、甘いジャズ・ヴォーカルで聴かせてくれたように…。『シレンシオ』収録の「ムナ・シェイア(満月)」は彼女の作品です。
“42:53” AGUSTIN PEREYRA LUCENA
名前がいいです。アグスティン・ペレイラ・ルセーナ。バーデン・パウエル直系のスクエアなボサノヴァ・ギタリストのはずなのに、とても変わった存在に思えます。北欧であえてレコーディングをしてブラジルを邂逅し、サウダージするペレイラ。彼のレパートリーは、ほとんどがボサノヴァ・スタイルなのに、ぼくにはボサノヴァに聴こえない。かつて、アメリカのジョン・フェイヒィが、カントリー・ブルースには聴こえなかったように。そう、これは、まさにペレイラの音楽。そうとしか言えないなぁ。
“Carlos Aguirre Grupo” Carlos Aguirre
子供の顔をした悪魔。ブラジルやアルゼンチンの音楽に触れる度、そう思います。南米の海や風のように、さわやかで聴きやすく、可愛らしさがあるのに、深い森の影をすとんと落としている。妖怪が潜んでいるような。アギーレも、素晴らしくメランコリーで美しいけれど、何処かに連れさられるような、危うさ、怖さがある。ブエノスアイレスではなく、遠く離れた、アギーレが住むパラナの幽玄の響き。だから気になる。師の音楽から、ぼくは生涯離れられないと思う。紛れもなく、最重要人物です。“ADOS RIOS”
“ADOS RIOS”NDRES BEEUWSAERT
今、3人のインテリジェントな、気になるアレンジャーがいます。ニコ・ミューリー、アンドレ・メマーリ、そしてアンドレス・ベエウサエルト。本作は、アンドレスの唯一のソロ作。鬼才クラウス・オガーマンとチック・コリアが、エドゥアルド・マテオを奏でたら…という妄想が、そのままアルバムになったような、奇跡の一枚です。ちょっと出来過ぎと思えるぐらい、隙のないアルバム。今まで何度聴いたことか、聴き飽きるということがないです。
“CUERPO Y ALMA” MATEO
音響系ミューズのファナ・モリーナはデビュー時から、ずっとファンだったのですが、その大元がこの人。ウルグアイの国宝級音楽家エドゥアルド・マテオ。アシッド・フォークのような感じもあるのですが、アフリカから渡りウルグアイで独自の熟成を果たした「カンドンベ」というリズムが癖になります。時折、何拍子なのかわからなくなって、ふわっと、迷子のような気持ちになる。実験音楽家のムーンドッグもそうですが、とにかく聴いてもらうしかない音楽家としか、いいようがない音楽家。ということは、凄いひと。ということなのです。
“PEQUENOS MUNDOS” JORGE FANDERMOLE
胡桃がぽつんと置かれた、ジャケット通りの音。木管楽器の流れが美しいです。ちょっと変わったシンガー・ソングライターで、アルゼンチンではなく時にシャンソンのようにも聴こえたり。カンツォーネのような、人懐っこいところもあり。そんなに凄いことをやってるわけではないのに、何度も聴きたくなる不思議なひとです。ハーモニカにアルゼンチンのリー・オスカー/フランコ・ルシアーニ。ピアノにはカルロス・アギーレも参加しています。
“LITORAL E INTERIOR” SERGIO SANTOS
「YOU TUBE」で偶然見た、アギーレ、サントス、アカ・セカ・トリオの共演映像は衝撃的で、それ以来、ロマン派ミナス系の重鎮セルジオ・サントスは、目が離せないひとになりました。ブラジル内地に位置するミナス・ジェライスの懐の深さをミルトン~ドリィ・カイミと並んで見事に歌にするひとです。このアルバムは最新作なのですが、あまりにも素晴らしいので『シレンシオ』ですぐにカヴァーしました。アカデミックなアレンジは誰かな、と思ったらアンドレ・メマーリ!やっぱり。流石です。 ワールドスタンダードが選ぶ”シレンシオ(静寂)の音楽”。
